サウジアラビアが進める
総工費5,000億ドルの
(当初の予測、
後に2兆〜8.8兆ドル=約1,400兆円に拡大)
超巨大未来都市プロジェクト
「NEOM」(ネオム)の背景と、
現在の計画縮小、
そしてAIデータセンターという
新たな方向性へのシフトについて
詳しく解説されています。
サウジビジョン2030とネオムの誕生
脱・石油依存
2015年頃の原油価格暴落や
世界的な脱炭素の流れを受け、
ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、
サウジの石油依存体質を改革する
「サウジビジョン2030」
を打ち出しました。
戦略的立地
ネオムが建設されているのは紅海の奥、
スエズ運河のすぐそば。
世界の物流の約12%が通る、
ヨーロッパ・アジア・アフリカの結節点という
世界屈指の戦略的価値を持つ場所です。
トランプ政権下での
アラブ諸国とイスラエルの外交正常化
「アブラハム合意」も、
この紅海周辺の平和と
ネオム計画を後押ししました。
ネオムを構成する主要な都市・リゾート計画の「いま」
当初の壮大なSF級の計画から、
現在は国際情勢や
原油価格
(1バレル100ドル想定が一時50ドルまで下落)
に伴う資金難により、
優先順位の組み換えや
計画変更を余儀なくされています。
【ザ・ライン(The Line)】
当初
幅200m、高さ500m、全長170kmに及ぶ
鏡壁に囲まれた直線型のビル都市。
車や道路をなくし、
移動は最下層の超高速鉄道。
(端から端まで20分)
都市の水平拡大(スプロール現象)を抑えて
自然を95%保護する計画でした。
いま
全長170kmのビジョンは
完全に諦めていないものの、
莫大な建設費(数千億〜1,400兆円)
の壁にぶつかり、
現在はまずは「2.4km」のみの
パイロットプロジェクトへと
大幅に縮小されています。
(全体完成は2045年〜2080年予想)
ただし、
2034年の
サウジ単独開催ワールドカップに向け、
地上350mの超高層ビルの最上階に
サッカースタジアムを建設する
計画は進められています。
【オクサゴン(Oxagon)】
特徴
陸と海にまたがる
最先端の8角形(オクタゴン+酸素)の
港湾・工業都市。
強烈な日差しと海風を活かした
太陽光・風力発電で
「グリーン水素」を生産する、
ネオムの稼働核心地域です。
いま
ネオムの中で
「最も成功している地域」
と言えます。
2026年3月に
世界最大級のコンテナ船が入港できる
港の親設工事が完了。
2026年末〜2027年初頭の
グリーン水素出荷を目指し、
工場は90%以上完成しています。
【トロジーナ(Trojena)】
特徴
砂漠の雪山に
人工湖や野外スキー場を作る年間型リゾート。
2029年のアジア冬季競技大会の開催が
予定されていました。
いま
資金難により優先順位が下がり、
現在は建設会社との契約が解除され
機材が撤去されつつあります。
(事実上の中止・後回し)
これに伴い、
2029年の冬季アジア大会の開催地も
カザフスタンへ変更されました。
【シンダラ(Sindalah)】
いま
ネオム最初の完成プロジェクトとして
2024年10月に正式オープン。
高級ヨットマリーナやゴルフ場、
マリオット系列の
高級ホテルなどが並ぶリゾートアイランドで、
現在は
サウジ政府の招待客や富豪限定ですが、
2026年後半〜2027年に
一般開放予定。
新たな方向性:世界最大の「AIデータセンターハブ」へ
ネオムは
単に規模を縮小した
「失敗」ではなく、
時代とテクノロジーのトレンドに合わせた
路線変更を行っています。
現在、
中東は広大な土地と
豊富な再エネ電力(太陽光)により、
莫大な電力を消費する
「AIデータセンター」の投資先として
世界中のビッグテックから
熱視線を浴びています。
米中の情報派遣争いの舞台
バイデン政権時代は
中国への流出を警戒して
最先端半導体(NVIDIA製チップ)の
中東輸出を制限していましたが、
トランプ大統領が返り咲いたことで、
2025年11月に
サウジへのチップ輸出を許可しました。
これは、サウジが
中国(ファーウェイ等)の技術に
傾くのを防ぐための
トランプ流のアプローチです。
都市計画の転用
縮小された
「ザ・ライン」の2.4km部分などは、
巨大なAIデータセンターとして
転用・建設される方針になっており、
2030年までに
3.3GW規模
(地方都市の全世帯電力を賄える規模の3倍以上)
まで拡大する計画です。
これにより、
かつて石油で
エネルギー覇権を握っていたサウジが、
次の時代には
「情報(データ・AI)の覇権」で
世界を牛耳るという
新たな狙いが見えてきています。
懸念点:バチバチのイラン情勢と地理的リスク
最先端都市へと進むネオムですが、
現在最大の障壁となっているのが
緊迫するイラン情勢です。
アメリカ資本が入った
ハイテクデータセンターは
イランからの
格好の攻撃対象になるリスクがあり、
またお隣りのイスラエルとイランが
バチバチに激突している
現在の戦況下では、
せっかく完成した
「シンダラ」やリゾートに
世界中の不裕層が
安心してバカンスに来られないという
厳しい現実が、
ネオムの未来を左右しています。