企業の成長には「全社戦略」と「成長戦略」の両方が重要です。
それぞれの定義と違い、どのように活用すればよいかを解説します。
1. 全社戦略(Corporate Strategy)とは?
全社戦略は企業全体の方向性を決める戦略であり、
複数の事業を展開する企業(多角化企業)で特に重要になります。
🔹全社戦略の主な内容
✅ 事業ポートフォリオの管理
– どの事業に投資し、どの事業を撤退するかを決める
– 例:「食品事業とアパレル事業を持つ企業が、食品事業に集中する」
✅ 経営資源の最適配分
– 人材・資金・設備をどの事業に優先的に投入するか決める
– 例:「利益率の高いIT事業にリソースを集中する」
✅ 多角化戦略(事業の拡大・撤退)
– 関連多角化(既存事業とシナジーがある新規事業)
– 非関連多角化(まったく新しい分野への進出)
– 例:「トヨタが自動車製造からロボティクスやAIに進出する」
✅ 成長戦略の方向性を決定
– 企業が「成長するか・安定を目指すか」などを決める
– 例:「スターバックスが海外進出を加速する」
🔸全社戦略のフレームワーク
・PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)
「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」の4つに分類し、事業の取捨選択を行う
・アンゾフの成長マトリックス
既存市場×新市場、既存製品×新製品で成長戦略を決める
・VRIO分析
企業の持つ強み(価値・希少性・模倣困難性・組織)を分析
2. 成長戦略(Growth Strategy)とは?
成長戦略は企業や事業を拡大するための具体的な手段や方向性を示すものです。
🔹成長戦略の主な種類
✅ ① 市場浸透戦略(Market Penetration)
– 既存市場×既存製品の成長
– シェア拡大を目指す(競争力強化、価格戦略、マーケティング強化)
– 例:「マクドナルドが値下げキャンペーンを行い、シェアを拡大」
✅ ② 新市場開拓戦略(Market Development)
– 新しい市場(地域・ターゲット)に進出
– 例:「ユニクロが東南アジア市場に進出」
✅ ③ 新製品開発戦略(Product Development)
– 既存市場向けに新製品を投入する
– 例:「AppleがiPhoneユーザー向けにApple Watchを開発」
✅ ④ 多角化戦略(Diversification)
– 新市場×新製品の展開(全く新しい分野へ進出)
– 例:「Amazonがクラウドサービス(AWS)を展開」
🔸成長戦略のフレームワーク
・アンゾフの成長マトリックス(上記4種類の戦略を整理する)
・ブルーオーシャン戦略(競争の少ない市場を開拓する)
・ジョブ理論(顧客のニーズを満たす製品・サービスを開発)
3. 全社戦略と成長戦略の関係
「全社戦略」は企業全体の方向性を示し、「成長戦略」はそれを実現するための具体的な戦略です。
✅ 全社戦略の決定 → 成長戦略の選択 → 事業戦略の実行
例:トヨタの場合
1. 全社戦略:「次世代モビリティ企業への転換」
2. 成長戦略:「電気自動車市場への進出(新市場開拓)」
3. 事業戦略:「EV開発の強化、バッテリー技術の研究」
4. 企業にとっての最適な戦略の選び方
✅ 企業の成長段階によって戦略を選ぶ
企業の成長段階 | 適した戦略
創業期(スタートアップ) | 市場浸透戦略 or 新市場開拓戦略
成長期 | 新製品開発 or 海外進出
成熟期 | 事業ポートフォリオ最適化(全社戦略)
衰退期 | 事業再編 or 事業売却
✅ 企業の強みと外部環境を分析する
– SWOT分析(強み・弱み・機会・脅威)で最適な戦略を選ぶ
– 競争優位性を活かせる戦略を採用
5. まとめ
🔹全社戦略
– 企業全体の方向性を決める
– 事業ポートフォリオの最適化
– 経営資源の配分
🔹成長戦略
– 企業を拡大するための具体的な戦略
– 市場浸透、新市場開拓、新製品開発、多角化
☛ 企業の成長には「全社戦略」で方向性を決め、「成長戦略」で実行することが重要!